Sweet Survivor

青緑の狭間に生きる

初めて1人で東京に行った日、

その日は9月7日だった。

当時16歳だったわたしは、NEWSと星野源とOKAMOTO'Sが好きなしがない女子高校生だった。その年の7月、秩父宮ラグビー場で行われたNEWSの公演のグッズ販売に母親と一緒にはじめて行った。そのときライブに行ってみたいではなくわたしもあの会場の中に入りたい、はっきりそう認識した。そして、そのあとNEWSが10周年記念イベントを東京ドームで行うという知らせがあった。これに応募しない手はない、そう思って郵便局の青い紙*1に必要事項を記入し緊張しながら窓口に差し出した。それから数週間、一通のメールが届いた。そこには

<<当選>>

 とはっきり書かれていた。飛び上がって喜んだ。やっと。やっと。小学生から好きだったあの人*2を一目見ることができる。そう思うとどうにかなってしまいそうなくらいにうれしかった。その公演には叔母が同行してくれることになり、叔母は全くNEWSを知らなかったので最新アルバムとベストを貸し出した。わたしは高校生活を送りつつもみんなの知らない世界を垣間見ることに少し優越感を抱いていた。うちわを作る、公演に行くときの服を考える、電車の切符を取る。そんな準備一つ一つに特別感とドキドキを覚えていた。チケットはの4色でNEWS 10th Anniversaryと書かれており、背景も同様の4色がグラデーションになっていた。

そして9月7日。土曜日の課外授業の後急いで家に帰って特急で東京に向かった。今までも何回か東京に行ってたけど、一人で行くのは初めてだった。緊張とワクワクとわずかばかりのもうこの感情も終わってしまうのかという寂しさを抱えながら電車に乗り込んだ。見覚えのある景色を一人きりで見ることに新鮮味を感じつつ、電車ではなぜかロックバンドの曲を聴いていた。そうして新宿に降り立った。初めてひとりで東京に降り立ったとき、不安でいっぱいだった。叔母とは、新宿駅の10番線の近くにあるコージーコーナーで待ち合わせをしていた。いなかったらどうしよう。そんなことを思いつつ待ち合わせ場所に行くと叔母がいて、水道橋*3に向かった。

水道橋の駅を出て、ガード下をくぐって横断歩道を渡ったら、東京ドームが見えた。今夜すきな人たちを一目見ることができる場所。そう考えるだけで胸が飛び出そうになった。手荷物検査を受けて、チケットがもぎられて、記念品が渡され、夢の国のような空間に入った。通路から客席に入ると、ステージが目に入った。初めて行った東京ドームはとても大きく見えた。真ん中にステージがあって、囲いのようにビジョンが配置されている。真ん中から、四方に道が伸びていて、四方にも小さなステージがあった。客席につく。ここで、わたしは見ることができるのか。いよいよなんだな、そう思うと緊張した。そして、18:00。暗転して、メンバーの名前がビジョンに映し出された。そして、囲いのようなビジョンが上にあがった。銀色のきらきらした衣装を身にまとった4人が見えた。すきな人たちはこの世の中に存在していたんだ、そう思った。ずっと画面と紙でしかその姿を見られなかった人たちは幻なんかでない。そう思うだけで泣けてきた。そのあとのことはぼんやりとしか覚えてない。また、その公演もどこか怖くて見ることができてない。ずっとわたしが記憶したことだけでこの公演を形成しておきたい。なぜかそういう感情を抱いたままだ。

それからしばらく、思い出せばあの夢の国に行ったような気になっていた。あのコンサートはたったの2時間なんかではなく、それにかかる準備と公演、そして後の思い出している時間だ。

そんな多幸感をもらった4人のコンサートを再び見ることができる。そう思うだけで幸せな気分になってわくわくする。そんな気分になった瞬間からコンサートは始まっている。

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*1:払込取扱票

*2:加藤シゲアキさん

*3:東京ドームの中央線での最寄り駅