Sweet Survivor

青緑の狭間に生きる

ピンクとグレーの感想みたいな何か

読書感想文というには自分語り

そのとき私は中学2年生だった。

好きなアイドルの加藤成亮さんが芸名を変えて、作家デビューするという。朝登校すると友人とその話題になった。私は成亮という字面が好きだったから、なんだか寂しくなったことを覚えている。次に覚えているのは友人にハードカバーのピンクとグレーを貸してもらったことだ。月に1000円しか小遣いをもらえなかったので、このとき自分のピンクとグレーは持ってなかった。こうして私はピンクとグレーを読んだ。

「やるしかないの、やらないなんてないから。」

小説に出てくる印象的な言葉だ。主人公の友人であるごっちの姉が言うものだ。彼女はバレエをやっていたが発表会の最後に落下し寝たきりになってしまう。当時13歳の私にはその切実さを受け止めきれなかった。

時が過ぎて私は22歳になった。日々就活に励む日々を送っていた中、辛くなった時や意味を見出せなくなった時ふと思い出した。今やっていることや決断が正しいかどうかは後にならないと分からないけど、やれることはやってみる。それしかないんだ、と。しっくりくるものがあった。14歳の自分にはまだわからなかったその言葉が、年齢を重ねて経験を重ねたことで受け入れられるキャパシティが広がったんだなあと思った。自分は全然大人じゃないと思っていたしこの本に出てくる人物よりずっと子供だけど、そんな私でも大人になっていっているのかもしれない。

この本に出てくる人物はどこが大人で、冷めてて、都会的だと思う。初めて読んだ時、こんな大人に私もなるのかもしれないと思った。田舎に住んでいた自分の周りにはいない人だと思った。読み返した時、私もこうなる過程にあるのかもしれないと思った。冷めることは期待しないことで、それは大人になることなのかもしれない。大人になるということはキャパシティが広がることだけど、同時に全く知らないことをまっさらに受け入れて反応する機会が減ることなのかもしれない。それでも変わり続けていくしかないんだと思う。やるしかないんだから。

 

ピンクとグレー

ピンクとグレー