Sweet Survivor

青緑の狭間に生きる

星降る夜に出掛けようを観てきたはなし(ネタバレあり・南座)

【注意!!ネタバレを含みます】

 

「今日は来てくれてありがとう。だって、誰も読んでくれないと思っていたから」

星降る夜に出掛けようを観に行ってきました。観た方の感想は難解でよくわからないという意見と最高って意見に分かれているように思いますが、個人的な感想は「よくわからないから面白い」でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレを含む

○ この舞台は3つの短編+ショータイムの構成

星の王子さま

髙木×髙地

思っていた星の王子さまとは違う。本当に大事なものは目には見えないというテーマを強調するためにソリッドにした印象。わたしは星の王子さまもあやふやな状態で観に行ってしまったのでそんなに違和感はなかったけど、内容を頭に入れた状態で見ると違和感があるのかもしれない。

ゆうやがセクシーお兄さんすぎた。最初にほぼアカペラで歌うんだけど、あれすごいプレッシャーだろうなと思った。でも観に行った回はしっかり魅せていてさすがだった。

パンフレットに舞台のためにボイストレーニングに通っているとあったけど、普段の歌い方とは違う歌い方をしていてそれがこの舞台にぴったりだった。そして、舞台に対する姿勢も垣間見えたような気がする。打って変わって、ショータイムだと普段の歌い方に近くなっていて切り替えがすごかった。

髙地くんは舞台経験が少ない=無垢という観客の印象と本人の無垢な雰囲気が重なって王子さまがぴったりだった。王子の「時間って何?」っていうセリフも、そりゃそうだよなと思わせる説得力があった。あと、マントづかい絶対難しかったんだろうな。

マントの下に隠れた衣装が背中が見えていておたくが双眼鏡構えてるのもわかる。

王子が小惑星330に帰ろうとしていることが分かったとき「行かないで!」っていう男が子供みたいだった。砂漠の中でひとりぼっちだと思っていたら突然現れた王子が男にとってどれほど心強かったか。「僕もただの他人とは思えない」というセリフのとおり友達のようなそれ以上のような存在だったんだと思う。でも、王子は別れを選んだ。大事なものは目には見えない、男の目には王子が見えなかったとしても鈴の音で感じることができるんだと思う。

この後ダンサーさんが月の淵をステップを踏んで進んだり群舞したりするんだけど、ここが結構すきなポイントかもしれない。群れで踊る姿が結局一番すきなんだよなあああ。

・喜びの孤独な衝動

髙木×中山

大きい道具がない中、二人の会話劇で最初から最後まで構成される物語。ステージに寝そべって池(≒客席)を見ているんだけど、最前のおたくより2列目あたりで目が合う方がよっぽどやばいような気がする。初回はありがたいことに前列よりだったので間近でゆうやがサリーを思い出して恋している表情を見ることができてよかった。

一番の親友が夜中の2時から2時半までの30分だけ会える公園の池にいる人魚のサリーに恋していると聞かされたら「お前目を覚ませよ」って思うのは自然だと思う。ジムはそもそも夜の街で女の子といい感じになっていたのに無理やりウォルターに誘われて公園に来ているんだから気乗りしないっていうのと、親友のウォルターに言われたことを信じたい気持ちと信じられないという気持ちが混ざっていて、それが伝わるような演技だった。ウォルターも本当にサリーをすきだという気持ちと、これが実在しないんではないかとどこかで悟っている気持ちがよく伝わってきた。その後に歌う「雨」と「Honesty」はそれぞれの気持ちの補完だったように思う。「雨」の切なさと「Honesty」の力強さがそれぞれ心を震わせるものだった。Honestyの優馬さんの歌声は会場中に響いていて、わたしが優馬さん一押しなのもあって感動的だったなあ。ただ、雨は芝居中と衣装が同じだったけど、Honestyは衣装が違っていたのはどういう意図があったんだろう。

 

・星降る夜に出掛けよう

中山×髙地

皆さんおっしゃっているように一番の難解パート。目に見えないものを信じることが大事と伝えられた「星の王子さま」、目に見えないものを信じられなかった「喜びの孤独な衝動」、目に見えないものを言葉を交わして分かり合える「星降る夜に出掛けよう」で話が進んで行くごとに互いのことを信じわかりあえていくというストーリーだったのでは?

王子様より孤独な男の方が普段やるような役に近いのかなあという印象がした。王子も何も知らない空っぽに見える感じがよく出ていてよかったけど、孤独な男は話し方や姿勢から違って別人のように感じた。2回見たけれど、過去を清算するといって女たちの衣装を段ボールに入れるくだりは比喩的表現だけど怖かった。特に初回は段ボールの先に自分の席があったから目線も合ってより怖かった。最後の「Champagne」のところで「僕も入れてよ!」とゆうやも加わるんだけど、ウォルターのこともあの二人ならわかってくれるのかなあ。

 

・ショータイム

Strangerがよすぎて毎回そこを全力で観ていた。最初に気だるそうにタバコを吸ってポケットに箱を戻して、舞台の奥から手前に歩いてくるんだけどそこが本当にかっこよくて…表情のつけ方、一挙動に魅了されてもっと見たい!!!!!となってしまった。Honestyと比べたら自分の出やすいキーではないのか?とも思うんだけど、あの曲調が本当に似合っていた。

情熱のすきなところはいっぱいあるんだけど、ゆうやとゆまが最初に手拍子をしながら舞台袖から出てくるところでプレゾン!!!!!って思って感動しちゃった。まさかこんなの見ることができるなんて思わないじゃん。あと、アイコンタクトすごいしていて仲の良さが垣間見えるところ。間奏の振りがすごい好きなんだけど、優馬が自分がビートに乗っているだけじゃなく、観ている人にも自身がビートに乗っていることが伝わるような踊り方をしていてこの人の踊り方すきだと思った。カーテンコールで上手下手に動いて手を振ってくれるんだけど、その移動でもビートに乗った動きをしていて、振りのないところでビートに乗った時の動きがすきだってことに気づいた。

 

全編を通したら「ここのつながりは…?」と思うところもあるんだけど、それを含めて分からないこと、理解できないことを否定するのではなくそういうこともあると尊重したい気持ちになれた舞台だった。3人のうち誰かが「観終わった後に前向きになれるような舞台」というニュアンスのことを開幕前に言っていた記憶があるけど、その意味が分かった。

大阪も観に行きたいなあ。